プルーフロードと最小引張荷重:ファスナーの2つの核心強度指標を見分ける
エグゼクティブサマリー
プルーフロードと最小引張荷重——報告書ではどちらも「合格」でも、狙う破損モードは全く別です。一方は永久変形を防ぎ、他方は引張破断を防ぎます。本稿は試験方法と適用対象から、この2指標の本質的な違いを解き、ナットとボルトでどちらを使うかを明確にします。
目次
2つの指標は混同されがち
ファスナー検査報告書では、プルーフロードと最小引張荷重が似た値で並んで現れ、「同じもの」と混同されやすくなっています。しかし両者が防ぐ破損は全く異なります。
- 最小引張荷重は引張破断を防ぎます——ねじ部品が破断せずに耐えるべき最小荷重。
- プルーフロードは永久変形を防ぎます——負荷して除荷した後、規定を超える永久伸びを生じてはならない荷重。
一方は「壊れない」こと、他方は「永久に変形しない」こと。この違いは実工学で極めて重みを持ちます。引張強さに合格したナットでも、プルーフロードでは伸び限界を超えることがあり、後者が軸力損失の直接原因となります。
最小引張荷重:測定ではなく計算で求める
最小引張荷重 Fm,min の式は非常に単純です。
Fm,min = Rm,min × As
Rm,min:強度区分で規定される引張強さ下限 (MPa)
As:ねじの応力断面積 (mm²)
ねじの応力断面積 As は有効径断面でも外径断面でもなく、規格が定める等価面積です。
As = π/4 × [(d2 + d3) / 2]²
d2:ピッチ径;d3:谷径(谷Rの影響を含む)
ピッチ径と谷径の平均を使うのは、ねじのせん断が谷径(引張破断)でも生じ、ピッチ径でのせん断能力にも関係し、実際の破面は両者の間の不規則な曲面だからです。この等価面積から計算した荷重だけが試験結果と一致します。
代表サイズについては As と対応荷重を直接参照できます。
| ねじサイズ | As (mm²) | 8.8 Fm,min (kN) | 10.9 Fm,min (kN) | 12.9 Fm,min (kN) |
|---|---|---|---|---|
| M6 | 20.1 | 16.1 | 20.9 | 24.5 |
| M8 | 36.6 | 29.3 | 38.1 | 44.7 |
| M10 | 58.0 | 46.4 | 60.3 | 70.8 |
| M12 | 84.3 | 67.4 | 87.7 | 102.9 |
| M16 | 157 | 125.6 | 163.3 | 191.5 |
| M20 | 245 | 196.0 | 254.8 | 298.9 |
プルーフロード:試験で検証、残存変形に着目
プルーフロード試験は、ファスナーに規定荷重を負荷して10〜15秒保持し、除荷して前後の長さ変化を測定します。
要点は「永久伸び」の限界です。GB/T 3098.1 はボルト・ねじに対し、L ≤ 8d のとき除荷後の永久伸びが 12.5 μm を超えてはならず、L > 8d のとき 25 μm を超えてはならないと規定します(L はファスナー長さ)。
12.5 μm とは何を意味するでしょうか。おおよそ人の髪の毛の直径の6分の1です。この限界は極めて厳格で、だからこそ「強度は合格するが容易に永久変形する」部品をふるい落とすのに有効です。
| 項目 | 最小引張荷重 | プルーフロード |
|---|---|---|
| 判定対象 | 破断するか | 永久伸びが限界を超えるか |
| 荷重の大きさ | 材料の引張強さ下限に等しい | 通常、引張強さ下限の0.8〜0.9倍 |
| 負荷方法 | 破断まで負荷 | 負荷・保持後、除荷 |
| 適用部品 | ボルト・ねじ・植込みボルト | ボルト・ねじ・植込みボルト・ナット |
| 防ぐ破損 | 過負荷破断 | 永久変形、軸力損失 |
プルーフロードはナットの主要判定基準
ナットについては、規格(GB/T 3098.2)が主にプルーフロードを評価し、最小引張荷重は評価しません。
理由は、機能上ナットは「ボルトに引かれる側」であり、ねじ山フランクのせん断と圧縮を受けるのであって、全断面引張りを受けるわけではないからです。ナットを引張荷重で評価することは物理的な意味を持ちません。したがってナットの検査アプローチは——プルーフロード負荷下で、ねじ山バンキング・亀裂・過大な永久伸びを生じないことです。
ナットの強度区分は通常「あるボルト区分と組合せる」形で記され、そのプルーフロードは組合せ相手のボルトが先に破断しナットは破損しないだけの十分さを意味します。例えば10級ナットは10.9 ボルトと、8級ナットは8.8 ボルトと組合せます。
プルーフロード試験の2つの落とし穴
落とし穴1:負荷速度
速すぎる負荷は動的効果を導入し、測定永久伸びを過大にします。遅すぎればクリープを導入し、同様にデータを歪めます。規格は負荷速度を明示しており、第三者試験室間の差はこの点に由来することがよくあります。
落とし穴2:測定基準
永久伸びの測定は、試験荷重負荷前後で同一位置の長さを測る必要があり、測定子自体が力で変形してはなりませ。実際の検査では、端面ゲージを使い接触変形があると数ミクロンの誤差を生みます——しかし合否限界は12.5 μm しかなく、誤差の割合は無視できません。
したがって試験室選定時には、専用のプルーフロード試験機(等尺測定装置付き)を使っているかを確認してください。一般引張試験機を一時的に転用したものでは不十分です。こうした設備の差が合否結果に与える影響は、多くの調達担当者の予想をはるかに上回ります。
結論:ボルトは引張荷重、ナットはプルーフロードを見る
2つの指標の役割分担は一文で覚えられます。
- ボルト・ねじ・植込みボルト——最小引張荷重が「破断しない」を、プルーフロードが「変形しない」を決め、両方を照合する。
- ナット——プルーフロードが主要判定基準。核心はねじ山がバンキングも伸びもしないこと。
- 両者は強度区分を適合させ、ボルトを先に破断させナットを後に破損させて、損失を最も安価な交換可能部品に留める。
この役割分担を理解すれば、多くの選定上の疑問——ナットに引張強さの照合が不要な理由、ボルト報告書に両荷重が必須な理由、現場で部品を交換する際に単価よりも適合区分が重要な理由——が自然に解けます。